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柴田さんからの質問回答 [エゾロジー倶楽部]

第2回エゾロジー倶楽部で、アンケートに記入頂いた質問の中から、田さんに回答を頂きました。

■質問
森林伐採の結果、流水中のリン濃度に変化はあるのでしょうか?

■お答え
一般的に河川水のリン濃度はとても低く、それが河川や湖沼内の生物生産を制限しているとも言われています(リン律速と呼ぶこともあります)。
それはもともと土壌中のリン濃度が低くて、移動しにくいことが原因しています。それでも樹木は根から酸を出したり、根に共生している微生物のおかげでリン栄養を吸収することができるので、温帯域では森林でのリン不足は起こりにくいといわれています。
森林伐採の場合でも、生態系内で大量に循環している窒素については、樹木の養分吸収停止の影響が大きく、伐採によって河川へ窒素が流出すると言われていますが、リンの場合はもともとの循環量が小さいということもあり、伐採によるリン流出の影響はあまり大きくありません。
実際に、お話しの中で紹介した北大天塩研究林での実験結果でも、伐採によるリン濃度の上昇は認められませんでした。
今回は時間の関係もあって、リンのお話はできませんでした。湖沼や沿岸の富栄養化(アオコの発生やそれに伴う溶存酸素不足)を考える場合には窒素とリンの濃度だけではなく、そのバランスが重要です。
例えば、森林伐採によって河川の硝酸態窒素濃度が上昇した場合でも、下流の湖沼や沿岸がリン不足の場合は、アオコの発生などが生じないこともあります。
一方、肥料や下水など窒素とリンが同時に多量に流出した場合には富栄養化が起こりやすいといえるでしょう。

柴田さん、回答ありがとうございます。

 

さて、2月のエゾロジー倶楽部ですが、2月26日(木)開催を目指しておりますが、話題提供頂く方がまだ決まっておりません。
楽しみにされていらっしゃる方々には申し訳ありませんが、場合によっては2月はお休みとさせて下さい。
3月開催は準備を整えて行きます。

 


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第2回エゾロジー倶楽部を開催しました [エゾロジー倶楽部]

1月22日に第2回エゾロジー倶楽部を開催しました。
今回も、職業や専門、年齢も様々な19名の方々に参加していただきました。
ありがとうございます。

今回のグルメはこれ
北海道の水.jpg

北海道各地の「名水」です。結構な種類があるものですね。


今回の話題提供者柴田英昭さんは、名寄市にある北海道大学の研究林で研究をされてきました。

090122エゾロジー.jpg 

「水質」と言っても様々な見方ができるかと思います。飲料水などの水質や下水処理で考えるのも水質です。
今回の柴田さんのお話しは、森林の「土壌」が川の水質ができる過程でどんな役割を果たしているのかという観点からのお話しでした。

さて、川の水質はどうやってできてくるのでしょうか。

雨として大気から地表に与えられた水は、地面にしみ込み、土中を通る地下水となり、川へと流出して行きます。
地下水が土壌中を通る過程の様々な作用によって、流出してくる水の水質がほぼ決まります。
このため、もちろん地質の影響もあると思いますが、川の水質は、周辺流域の土壌の環境条件によってほぼ作られてくると考えられます。

柴田さんは、植物が生きていく上で欠かせない栄養分であり、農業では肥料として使われている「窒素」をとりあげて、森林の中で行われている物質循環という過程を考える視点から説明を始めてくれました。
森林の土壌の中での窒素は、アンモニア性窒素や硝酸性窒素など様々に形を変えながら、樹木の根から養分として吸収され、落葉などの形で再び土壌へと帰っていく物質循環のサイクルをつくっています。
河川近くでの水質調査の研究成果から、川のすぐ横にある「河畔林」が実は窒素分を除去するという意味では重要であるということが見えてきたのだそうです。

柴田さんのHPに掲載されていますこちらの論文に、この話が詳しく載っています。
柴田英昭 (2004) 大気-森林-河川系の窒素移動と循環. 特集「森林と渓流・河川の生物地球化学」,地球環境 9(1): 75-82


後半は、天塩川流域の各地で河川水質を調査された結果についてのお話しでした。
河川水質中の窒素分や鉄分などの濃度は川の上下流などの場所によって変わっているというデータが得られたことを教えてもらいました。
なお、柴田さんは第2回環境サスペンスでお話しされた上田先生と天塩川で共同研究もされ、こちらの本にその内容が書かれています。

最後にされた問題提起も含め、今回も学ぶべき情報と考えさせられる話題が盛りだくさんの有意義なお話しを聞かせて頂きました。

柴田さんありがとうございます。
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第2回エゾロジー倶楽部は「河川水質の形成と役割」です [エゾロジー倶楽部]

Bonne Annee
あけましておめでとうございます。 ピエール福間です。
みなさまの年末年始はいかがでしたでしょうか?

さて、環境サスペンスから生まれた月に1度のイブニングセミナー「エゾロジー倶楽部」は、

次回1月22日19時~21時でより開催します。


今回のテーマは、「河川水質の形成と役割」。

ゲストは名寄市にある北大フィールド科学センターの森林圏ステーションから、柴田英昭さんにお越しいただきます。
柴田さんは、第2回環境サスペンスでゲストの上田先生とも天塩川で共同研究をされています。
河川の水質の形成メカニズムや空間変化を皮切りに、河川周辺の土地利用や環境変化によって、水質がどう変わってくるのかを、土壌と水質のつながりの視点からお話ししていただきます。

また、エゾロジー倶楽部では毎回の話題に関係するグルメを用意いたします。
今回は珍しい水を使った飲み物(お酒?)などを考えてます。
みなさまも、グルメ心と好奇心を満たすために是非ご参加下さい。

エゾロジー倶楽部への参加にご興味のある方は、
Env.suspense☆gmail.com(☆を@に変えてご使用下さい)までご連絡下さい。

なお、第1回目のエゾロジー倶楽部の様子はこちらのブログでわかります!


(注:説明内容に一部不備がありましたので、内容訂正いたしました)


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第1回エゾロジー倶楽部を開催しました [エゾロジー倶楽部]

環境サスペンスの兄弟企画として始めた、顔の見える少人数での集まりエゾロジー倶楽部を開催しました。

これまで、環境サスペンスに参加頂いた方も含めて、エゾロジー倶楽部に関心を持って頂いた14名の方に参加頂いて始まりました。参加頂いた皆さま。ありがとうございます。


本日のグルメは、今日の話題であるサクラマス(サケ科魚類)にちなみ佐藤水産さんで買ってきた鮭のおつまみの数々。
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これは、ちょっとインパクトありましたね。トバがつながったままのサケです。


グルメ以上に、話題提供者の卜部さんのお話を酒の肴にさせてもらい、セミナーはスタートしました。シロザケとサクラマスの生活史の違いを比較しながら、卜部さんはサクラマスが生活史の中で河川をどのように使っているのかという話をしてくれます。

話の途中でも「スモルト」って何?などの専門用語への質問や、「どうやって調査したのか」などの質問が次々と聞き手側から出てきます。サケ科魚類に詳しい方もいれば、植生など別の分野が専門の方もいるので、話し方が難しかったと思いますが、誰もが楽しめる形で卜部さんに話題提供をしてもらいました。

 第1回エゾロジー倶楽部.JPG

一通り、お話しが終わった後は、半分ずつのグループに分けて、参加者間でのトークタイムとしました。初めて合う方もいらっしゃるので、簡単な自己紹介をしたり、自分たちの経験も交えて卜部さんの話の感想を語り合いました。話している人の顔を覚えられる人数で話をすることで、誰もが話をするだけでなく、参加者間でのコミュニケーションもそこで生まれてきたかと思います。


最後に再び全体でのトーク。
グループトークとグルメで和んだ雰囲気の中で、話は盛り上がっていきました。

今回のエゾロジー倶楽部には、前回の環境サスペンスでゲストとして話題提供頂いた
上田先生や有賀さんもいらっしゃったことから、環境サスペンスでの知識をベースに
サケ科魚類の中でサクラマスとカラフトマスが進化の両端に位置している魚だという話も聞け、両者の話題のつながりを実感することもできました。

サクラマスは母川回帰性が高く、生活の中で川に依存している割合が高いのですが、カラフトマスは反対に生まれた川に帰ってくる割合が低く、生涯の中であまり川を使っていないのだそうです。進化という面から見ると実はカラフトマスの方が進化しているということは、海から生まれた生命が川や陸上へと向かう方向に進化した流れとは、逆なのではないかと、会場を巻き込んだ話題はつきません。


話題提供者だけが話すのではなく、参加者間でも話が弾む場。
エゾロジー倶楽部の目指す形を、おぼろげながらに作ることができたかと思います。


こちらにもエゾロジー倶楽部の雰囲気がよくわかる報告がありますのでご覧下さい。


この集まりの主旨を表す言葉がうまく出てこなかったので、「夜のランチセミナー」と銘打っって案内をしたのですが、気軽に専門的な話を聞ける勉強会のイメージに異業種交流会や合コンなどの要素も含めて、集まりの中で人の輪が広がるコミュニティーを目指しました。この形式は「イブニングセミナー」という呼び方でどうでしょうか。

今後も毎月中旬の木曜夜に定期開催をしていきます。
まずは、川に関わりのある話題をつなげていく予定です。
川は流域のいろいろな要素をつなげる働きをしています。川という軸を通して、魚類、植物、地質、気象などの自然科学の話題をするだけでなく、経済学や社会学、歴史文化などの話題も幅広くできると面白いですね。


第1回の開催が月末になったため次の12月は開催しませんが、1月から行って来ます。

第2回エゾロジー倶楽部は 1月15日(木)19時~21時を予定しています。

今後の話題としては、魚の棲む川の環境につながる水質の話を1月に行い、季節感のある話題として、2月は雪、融雪のはじまる3月は川の水量、4月は地下水の水文の話を予定しています。5月以降の生き物が活発に活動を始める時期からは生物系の話題でしょうか。


これからも、月1開催を目指して行っていきます。
環境サスペンスと共に、エゾロジー倶楽部もご注目下さい


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夜のランチセミナー「エゾロジー倶楽部」を始めます。 [ビジョン]

サイエンスカフェ「環境サスペンス」のビジョンを考え始めた当初から企画を温めていました、専門分野の違う人々が集まって、異業種横断的に情報交換をしていく場を、やっと始めることとなりました。

名称は「エゾロジー倶楽部」です。

ゲストの話題をネタに軽飲食をしながら気軽に語り合う、夜のランチセミナーというコンセプトとしました。

環境やフィールド科学、防災、地理、地学など、様々な専門分野を横断し、学際的に知と人とが出会える場となることを目指し、月一回を目標に今後開催していきます。

エコロジーではなく、北海道ならではの学際的な科学技術の知、「蝦夷ロジー」がここから育っていくことを願い、この集まりを「エゾロジー倶楽部」と名付けることにしました。


第1回目のエゾロジー倶楽部は、11月27日(木)19時~21時で北海道大学農学部で開催いたします。
最初の話題は、前回の環境サスペンスでも取りあげたサケの話題に関連させました。
北海道立水産孵化場の卜部浩一さんにサケ科の魚類であるサクラマス(ヤマメとも呼ばれます)と河川環境にまつわる話しをネタふりとしてしてお願いしています。

あくまでも話題提供なので、その場に集まる方々の興味の方向性によって、話の流れは変わってくるでしょうし、話にまとまりがなく発散するかもしれません。しかし、その中で情報の共有や参加者どうしのつながりが生まれてくるかと思います。


参加者どうしの顔がわかる少人数な集まりとするため、まずは、環境サスペンス後の交流会に参加頂いた方々などにご案内をさせて頂いています。

エゾロジー倶楽部への参加にご興味のある方は、
Env.suspense☆gmail.com(☆を@に変えてご使用下さい)までご連絡下さい。


今後の環境サスペンスは、
■サイエンスカフェ「環境サスペンス」
■環境サスペンス交流会(サイエンスカフェ後の2次会)
■エゾロジー倶楽部(夜のランチタイムセミナー)
の3本仕立てで活動を行っていきますので、ご注目下さい。


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NHKの科学番組でサケの研究が紹介されます [つながる]

 第2回環境サスペンスでお話し頂いた上田先生の研究が、今週末のNHKの科学番組で紹介されるようです。

NHK教育 サイエンスZERO
サケの研究から環境に迫る」
 11月8日(土)24:00~24:44(再放送もあります)
環境サスペンスで お話し頂いたサケについての上田先生の研究内容が
番組でも取りあげられるかと思います。
皆さまぜひご覧下さい。
 

 


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【投票!】豊平川のサケの将来について-あなたはどう考えますか [つながる]

第2回環境サスペンス「川をたずねて三千海里」において、札幌市豊平川さけ科学館の有賀さんは、次のような問いかけをされました。

 

「放流を続けた結果、豊平川でもサケが自然産卵をするようになりました。今後も放流を続けるべきでしょうか?」

 

 環境サスペンスでは、この問いかけに答えるために、本ブログを通じて意見投票を行いたいと思います。

ここにある解説をお読みになり、豊平川のサケの将来についてあなたのご意見を下のブログパーツを使って投票してみませんか。

4つの選択肢ボタンのうちの一つをあなたの意見として選び、クリックして下さい。

ボタンをクリックすると、これまでの各意見への投票数とその割合が円グラフで見えるようになります。

また、豊平川のサケの将来について具体的なご意見があれば、コメントいただくと幸いです。

 皆さまのご意見をお待ちしています


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豊平川のサケの将来は-放流と自然産卵 [つながる]

札幌市豊平川さけ科学館では、カムバックサーモン運動の意志を継ぎ、豊平川にサケの稚魚を放流してきました。その結果、豊平川にサケが帰り、産卵するようになりました。

さけ科学館では、当初、豊平川に産卵されたサケの卵をふ化させて育てた稚魚を放流していましたが、産卵範囲が広くなったため、放流に必要な稚魚を豊平川に回帰したサケの卵から確保することが難しくなりました。このため、現在はまた千歳川から稚魚をもらい豊平川に放流をするようになっています。

 

豊平川さけ.jpg

 

札幌市豊平川さけ科学館では、今後もサケの放流を続けていくべきかについて、市民の方々の意見をお聞きしながら、再検討をしていくべき時期にあると考えられています。

放流と自然産卵では下図のような特徴があります。

 

 豊平川さけ 放流と自然産卵.jpg

 


このため、放流されたサケと自然産卵で育ち豊平川に帰ってきたサケの割合を現在調査によって確認を始めています。

豊平川さけ 見分け.jpg


 

放流すべきか自然産卵にまかせるべきか。豊平川のサケの将来について

あなたは、どう考えますか?ご意見を投票してください。

 

注:環サスでも質問がありました琴似発寒川で見つけられたアブラビレのないサケについては、問い合わせたところ、さけ科学館さんが調査のために琴似発寒川で採捕したサケの目印なのだそうです。アブラビレがないことが豊平川に放流したサケが迷い込んだとものとは単純に考え難いと言えます。

 


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豊平川のサケが語る出生の謎とは [環境サスペンス]

サケは、生まれた川にどうして帰ってくることができるのでしょうか?。
北海道大学の上田先生にはサケの生態や川に帰るメカニズムについての最新の研究成果をお聞きしました。


 海に下ったサケが生まれた川に産卵のために帰ってくる「母川回帰(ぼせんかいき)」の過程については、まだまだ多くの謎が残されているのですが、上田先生は最先端の研究成果をお話しくださいました。
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 海に下ったサケは北太平洋で成長し、ベーリング海から北海道へともどってきます。
その距離は往復で約三千海里(5500km)にもなる長い道のりです。これまでその道のりについては良くわかってなかったのですが、ベーリング海でサケの背中に、プロペラ流速計をつけて放す実験によって、サケは2ヶ月程度で2700km程の距離をほぼまっすぐ泳いで北海道沿岸に帰ってくることが確認できたのだそうです。このような、サケの回遊ルートを解明したデータはそれまでなく、このたいへん貴重なデータなのです。

 川の近くまで到達したサケは、においによって生まれた川を探し出します。そのにおいというのは、実は十数種類ものアミノ酸の組成によって決まっているということを、上田先生は実験によって確かめられました。川ごとに含まれるアミノ酸の組成は実は異なっていますが、川のアミノ酸組成を人工的に再現した人工河川水ともともとの天然の河川水を使った実験によって、人工河川水も生まれた川の水のにおいだと認識することが確認されたのです。


 サケはにおいで生まれた川を知るということを知っている方は多いかと思います。しかし、においとは川の水に含まれるアミノ酸の組成であるということは、ほとんど知られていない非常に興味深い研究成果情報なのではないでしょうか。


 さてカムバックサーモン運動で豊平川に放流した約100万匹のサケは、実は千歳川で生まれて育った稚魚でした。それではなぜ、千歳川で生まれたサケが豊平川に帰ってきたのでしょうか?千歳川で生まれたサケならば、生まれた川である千歳川に帰ってくるのではないでしょうか?これが今回の環境サスペンスの謎の一つである「豊平川のサケが語る出生の謎」です。


 サケは生まれた川をにおいで知るのならば、そのにおいはいつ記憶するのでしょうか。
上田先生のお話によると、サケは、稚魚が海に下れるようになって(現象を銀化と呼び、銀化したサケはスモルトと呼ばれます)から、海に到達するあいだに川のにおいを憶えるのだそうです。専門用語ではこれを「母川記銘(ぼせんきめい)」と呼びます。鳥のひなが生まれて始めて見る動くものを母親だと記憶する「すりこみ」と呼ばれる現象と同じように、サケの稚魚は一度だけ川のにおいを憶えるのです。その時期が生まれたばかりの稚魚の段階ではなく、ある程度育って降海する直前に憶えるのだそうです。


 だから、千歳川で生まれ育った稚魚でも、まだ母川記銘を行える状態に生育していないため、放流した後に豊平川のにおいを憶えて、生まれ故郷の川は豊平川だと学習するのです。これが、今回の謎の答えでした。


上田先生のお話では、他にも多くのサケ科魚類にまつわる謎が語られました。2008_1002_185326AA.JPG


 例えば、生まれた川にきちんと帰ってくるサケの方が、その種が生存するためにはいいのかという問題があります。うまれた川に帰ってくる(回帰する)方がいいはずだと単純に思ってしまうのですが、実は、別な川に迷ってしまう魚がいることにも意味があるのだそうです。


 サケが回帰してくるまでには数年の月日がかかります。このため、その間に生まれた川の環境が変わってしまうことがあるかもしれません。生まれた川にしか回帰できないと、何らかのアクシデントが川に起きた場合、その川で生まれたサケはみんな絶えてしまう危険があります。サケにとっては、「生まれた川に帰らないこと」も実は重要な意味を持っていたのです。別な川に行ってしまうことは生息できる河川を増やしていくことにもなります。サケ科魚類の種類によって、川への回帰率はことなり、カラフトマスは回帰率が低く、シロザケは高いのだそうです。


今回の環境サスペンスのオチにも、このカラフトマスの生態を利用させていただきました。


上田先生のサケの生態に関する興味深い話題は、環境サスペンスの時間枠だけでは伝えきれないほどのものでした。
今回の話題やご紹介できなかった話題については、上田先生も書かれている「フィールド科学への招待」という本に詳しく書かれています。


次回は、最後の質問に答える形で、有賀さんが投げかけられた、豊平川のサケの将来についての話題をブログで報告します。


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「川をたずねて三千海里」を開催しました [環境サスペンス]

第2回環境サスペンス「川をたずねて三千海里-豊平川のサケが語る出生の謎-」
を開催しました。
ご来場頂いた皆さま、ありがとうございます。

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 サケに関する話題を今回取りあげたのですが、取材の過程でサケに関する興味深いネタに
巡り会えたことが、今回の大きなポイントだったかと思います。


一つは、カムバックサーモン運動。もう一つはサケは川のにおいをアミノ酸で知るという研究成果です。

まずゲストの有賀さんに、豊平川でのサケの自然産卵の現況と、カムバックサーモン運動や豊平川さけ科学館のできた経緯についてお話し頂きました。
環サスサケ2.jpg


大都会である札幌市の真ん中に多くのサケが上り、産卵しているということ。さらに、漁業ではなく環境の視点から実施されている活動によって、サケの産卵が支えられているということは、非常に貴重な事例ではないでしょうか。

カムバックサーモン運動は30年前に豊平川にサケを呼び戻そうという思い出市民が始めた活動です。私をはじめ、環境サスペンス制作委員会のスタッフは、この活動について実はよく知らなかったのです。
しかし、文献やインターネットで当時の活動の盛り上がりについての情報を調べるにつれて、この活動は、私たちが見習い、今後も尊敬を払い語り継いでいくべき重要な市民活動だったことがわかりました。(こちらのサイトに当時の活動がご紹介されています)

それまでは水産事業としてしか放流していなかったサケの稚魚を、環境保全活動のシンボルとして市民活動によって放流するという前例のない活動が生み出されたということは、札幌市民が誇るべきことだったんだと私は感じました。

また、その活動が一瞬のブームで終わらずに、「札幌市豊平川さけ科学館」を生み出すとともに、魚道の設置など、多くの方々の協力を得ながら活動が継続して来たことには、敬意を払わずにはいられません。
カムバックサーモン運動の活動過程には、多くの人々が共鳴できる形で、夢を求めて課題を克服していった前向きな姿を感じました。

さて、今回前半で用意した謎は、「サケの生まれ故郷はいったいどこだと考えるべきか?」というものです。
カムバックサーモン運動では、千歳川で生まれて育った稚魚をもらって、豊平川に放流しました。生まれた川にサケはもどってくると私は思っていたのですが、そうすると、「千歳川産の稚魚が千歳川にもどらずに豊平川に帰って来るというのは変ではないか」と疑問がわいてきたのです。

その謎に答えて頂いたのは北海道大学の上田宏教授です。
上田先生のお話については、また明日ご紹介しましょう。

P.S.こちらの五号館のつぶやきさんのブログでも第2回環境サスペンスの開催状況が紹介されております。


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